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クロノvs???

平木さんのクロノ君を見て思いついた小話。
おかしい、かっこいいイケメンクロノ君を描く話だったハズなのに。

さて、と今のソファーに腰掛け、クロノはテーブルの上のソレを仇敵のように睨みつけた。
曲線を描く輪郭、茶黒くコーティングされたボディ、それにのる妖精のように色とりどりに乗るコーディネイト。
その敵を観察が進むほどに眉間にしわが寄っていくクロノは、知らずソレの名を口に出していた。

「チョコ、バナナ…………。」

チョコバナナ。
いろいろなデザインのものがあるが、一般的にはバナナ丸々一本に溶かしたチョコをかけて固め、好みでチョコチップをトッピングする最近では夜店で定番のお菓子である。
大体は棒にさして作ってあるので、歩きながら食べられるお手軽さと子供も食べやすい一品である。
それをクロノは、ただ一人リビングで睨みつけていた。
ゆっくりと、手を伸ばしそれを掴む。

「っく……!」

顔に近づけただけで既に香ってくる甘い匂いに、自然と表情が険しくなる。
周知の事実ではあるが、クロノ・ハラオウンは甘いものが苦手だ。
嫌いと言っても差し支えないだろう。
コーヒーは当然のように完全なブラックであるし、たまに食べているお菓子といえば甘味がほぼ無い栄養調整食品のようなクッキーであったり、この地球に来てから知った醤油せんべい等、おおよそ世間的に十代の少年が好むものばかりである。
そんな彼にとって今手に取るソレは呪いの毒りんご同義である。

「―――だけど。」

しかし、苦手だ嫌いだと逃げ出すのは彼の流儀ではない。
否、弱点を認め克服していくことこそクロノ・ハラオウンの歩んできた道だ。
新しく家族になった妹が好きだと言っていた菓子を同じ食卓で気を使わせずに食べてあげたい。
自分の両親を手伝うためにこっそりと特訓している少女を、味見ぐらいは手伝えるようになりたい。
チェシャ猫笑いで「甘いものが食べれへんとか、ピーマンが苦いから食べたくなーいって言ってる子供と一緒やん、ぷぷー!可愛いーでくろのちゃん!」とあざ笑う夜天の主を黙らせたい。

「そうだ。」

やりたいことは見えている。
やるべきことも分かっている。
だからこそこのチョコバナナだ。
いきなり生クリームだの砂糖菓子だのが平然と食べられるようになるだなんて思い上がるようなことはない。
探して探して、心理的に妥協できるのがこれだったのだ。
まず、一番メインに来る甘味はバナナだ。そう、果物ならば甘いといってもそうきつさはないはず。そして、チョコ。これは難敵ではあるが薄く伸ばされているそれは味付けていどになっているはずだ。チップは、まぁ、食感を出すためのトッピングと思えばいけるはず。
そこまで考えながら、自身のあまりにも希望的推測な理屈に皮肉めいた笑が込上がる。
まるで道化だな。
笑いながら覚悟を決める。そうともこの身が道化であるならば一体何を恐ることがあるというのか。

「あぐ!」

覚悟を決めれば後は即座に行動に移せるのが彼だ。
一気に半分ほどを大口を開けてくわえ込む。

「(あ、甘い―――!?)」

その心の叫びは今口内を侵食するソレに向けてか自身の穴だらけの計画性か。
だが、ここで吐き出すような失態はおかせない。

「う、ぐく……!ん!」

咀嚼し、なるだけ舌に当たらないよう―――どう考えても無駄なあがきではあるが―――少しづつ飲み込む。
そして、最後のひとかけらがその喉を通り過ぎた。

「―――っくは!よ、よしあと半分。」

既に、敵のライフは残り半分。
初撃をしのげば攻撃を受けることも覚悟できる。
これならば、いける。
クロノが己の勝機を確信し、大敵に止めをさそうとしたその時、背後で何か荷物を落とす音が静かだったリビングに響く。
まるで敵の伏兵が現れた時のように飛び上がるように振り返るクロノ。
そこに立っていたのは当然敵でもなんでもなく、当たり前のように家に帰ってきた妹だ。
しかし、彼女が視線を向けているのは兄である自分であるはずなのに、その表情はまるで得体の知れない何かを見るそれだ。

「ち、違うんだフェイト。」

何が違うのかなど言っている自分でもわからない。
わからないが、日が傾き気が付けば薄暗くなったリビングで家族とは言え男が一人、苦しみ呻きながらチョコバナナを頬張っている画は、なんというかどうしようもなくまずい。
まずいのだが、どう言い訳しようともそれが事実である以上弁明のしようがない。
と、クロノが一人でパニックに陥ってると不意にフェイトの表情が和らいだ。
その表情はなんというか、とても優しい慈愛に満ちた柔らかい。
それが、逆に辛い。

「クロノ最近忙しかったもんね。うん、執務官って大変だもんね。」
「待ってくれ……。」
「今日はね久しぶりみんなそろうしシチューにしようと思うんだ。」
「フェイト、とりあえず落ち着くんだ。僕はもう落ち着いたぞ?」
「うん。今日はゆっくり休めばいいよクロノ。あ、お風呂沸かしてくるね!」
「フェイト―――!」

羽のよに軽い足取りで、表現するならばまるで逃げるようにリビングから去っていく少女。
伸ばしたてが殊更虚しい。

「こんなはずじゃ…………。」

少女たちのために甘いものを克服しようとしたクロノ。
しかして、世界は彼に甘くはなかった。


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テーマ : 魔法少女リリカルなのは
ジャンル : アニメ・コミック

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