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クリスマス①


まだほかにもあるけど、残りは明日。

やっぱりクリスマス最初は彼女でしょう。



 紙面にペンを走らせる音と、ウィンドウを操作する機械音が執務室に静かに響く。
世間のクリスマスイブの喧騒とはまるで無縁の静寂のなか、二人は黙々と職務を続ける。

 「すまないな、君には夕方には上がってもらう予定だったのに。」

 ペンでサインとチェックを続ける手は止めずにクロノが向かいに座る彼女に不意に声をかけた。時刻は既に0時すぎ、予定がずれたどころではない。

 「構いませんよ、主たちは翠屋で楽しくされたでしょうし、そもそもは私の仕事をクロノに手伝ってもらっているようなものですから。」

 答えるリインも作業の手は止めない。

 「別に僕に任せてパーティーの方へ行っても良かったんだけどな。」
 「そうはいきませんよ。それに、そうしたらクロノが一人になってしまうじゃないですか。」
 「……子供か僕は……?」
 「十分に子供ですよ。まぁ、最近身長は伸びてきたようですが。」
 「む。」

 その物言いが、暗にまだクロノよりも彼女の方が目線が高い言い方であるのを感じ、不満そうに表情を歪める。

 「別に身長の高さで大人かどうかは決まらないだろう?」
 「フフ、そうですね。そういうことにしておきましょうか。」
 「……………………そういう君こそ初めてのクリスマスじゃ大人とは思えない騒動だったそうじゃないか?」
 「なっ―――!?」

 なぜそれを知っているのか?と叫びそうになって既のところで自制する。
 それは彼女が初めてクリスマスというイベントを迎えた時のこと。そのイベントの大まかな内容をたまたまそういう話題になったフェイトから聞いた彼女は凛々しい顔つきで急に立ち上がり。

 「つまり、その日にサンタクロースという者に願いを言えば叶えてくれるのだな?」
 「え?え?いやそれはちょっと違う、かな……?」
 「よし、ここはぜひ私に任せてくれ。」
 「ま、任せるって何を?」
 「そのサンタとやらを見つけて捕まえてくる。我が主やお前たちの願いを叶えるためだ。」
 「―――え?えぇ!?」
 「思い立ったが、だ。では行ってくる!」
 「ちょちょっとまってよアインスぅぅぅ!」

 結局、彼女は数時間後に北極でシロクマと戦ってるところで発見され、シグナムにこっぴどく叱られたのだった。

 「ツヴァイに聞いたんだ。アインスはしろくまさんにも負けないんですー!って自慢げに話してくれたぞ。」
 「あの子は全く……。」

 あの話を無邪気に、それこそ武勇伝の様にクロノに話すあの小さな末っ子の姿が容易く想像できる。

 「まぁ、お恥ずかしい話ではありますがもう正しく理解しましたし、クロノが大人だという話にはなりませんよね?」
 「……そう返すか。じゃあ、どうすれば大人なんだ?」
 「そうですね……。」

 考え込み、ふと、先日読んだ小説のなかにもこんなやりとりがあったことを思い出す。
はて、あの時は確かそう問いかけられたヒロインは主人公にどう返したのだったか?

 「私のことをドキドキさせてみて下さい。」

 思い出して、そのままポロリと口から溢れる。
 その瞬間、今まで止まることのなかった二人の手が同時に止まった。
クロノはまるで機能が止まってしまったかのようにぽかんと彼女の方を見て、リインは今の自分の発言の意味を遅れながら頭が理解し、爆発でもしたかのように顔を紅葉させ両手でその顔を覆う。

 「わわわわすれてくだしゃい!」

 恥ずかしさのあまりまともに喋れない。なんという失態だ、つい数秒前までは主導権を余裕を持ってもてていたのになんでこんな事になるとは、と悶えるリイン。

 「はぅ!」

 と、唐突に背中に何かがのしかかり顔を上げる。

 「くろクロノ!何を!?」
 「ドキドキさせてみろ、といったのは君だろう?」

 クロノの吐息の様な囁きが耳をくすぐる。逃げようにも抱きしめるように首に回された彼の両腕がそれをゆるさない。

 「どうだ?」
 「…………あ。」
 「あ?」
 「あなたにこんなことされて、どきどきしない訳がありません。」

 その言葉に、クロノの心音が彼女と同じように跳ね上がる。背中越しに伝わる心音が徐々に混ざる。
 トクントクントクントクントクン―――。

 「ふー。」
 「ひゃ!」

 静寂に耐え切れなくなったクロノがリインの首筋に息を吹きかける。

 「な、何をするんですか!?」
 「いや、ついな。」
 「ついじゃないですよ、もう……。」
 「すまない。」
 「謝らないでください……仕事、終わらせましょう。」
 「そうだな。」

 お互いに名残惜しさを感じながら、席に戻る。そして、作業を再開しようとして、クロノが小さく呟いた。

 「続きは終わってから、な。」

 そして再び部屋の中には作業する音が、先ほどよりも少し速いペースで響くのであった。




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なんでもない日記から漫画や小説の感想を載せています。
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