各家の元旦
今日は元旦の話。
高町家、ハラオウン家、紫天一家それぞれほんとにちょっとした小話。
といっても、家族全部出てくるわけじゃないんですけどね。
八神家は大晦日ネタやったので今日はお休みー
なに気にこのサイトに初登場ばっかりなキャラばっかり。そして紫天一家でこーどなすてまなのです(ウケケ
では、お暇な方は続きからどうぞー
【高町家】
普段は緊張感のある静けさの道場に、並ぶ色とりどりのおせち。その光景にユーノは素直に感嘆の吐息も漏らした。
「凄いね。」
「うん、今年はみんなが集まるから、お母さんもお姉ちゃんも凄く張り切ってたから。」
答えたのは、一緒に料理を並べていたなのは。こうして二人で大分並べたが、台所ではまだまだ料理が出来てきているはずである。今日は夕方からハラオウン家、八神家は勿論アリサやすずか、紫天一家にアースラスタッフもやってきての大宴会が行われるのだ。アルフやヴィータの普段の食べっぷりを考えればこの道場に今ずらりと並べられた量でも足りるかどうか不安である。
「ごめんねユーノ君。お客さんなのに手伝わせちゃって。」
「あぁ、気にしないで。元々そのつもりで時間よりも早く来たんだし。」
その人数を聞いて、手伝いが要るだろうと思ったのは本当だった。
「でもお母さん……。」
「あはは、ほんとに気にしないでよなのは。」
本当だったのだが、まさか到着するなり、ユーノが来るのがわかっていたかのようにジャストサイズのエプロンを渡されるとは思っていなかった。
桃子にしてみればなのはと二人にしてあげようという小粋な計らいなのだが――――しかし、エプロンの準備をしていた理由の説明にはならない――――残念ながら当人達はそんな気遣いに気付く事も無く、ただただ二人で協力して作業をしているのだった。
「んー……。」
「って、どうしたのなのは?なにか付いてる?」
「んーん。ユーノ君エプロンに合うなーって。」
「えぇ!?そ、そうかな?」
「うん。似合ってる似合ってる!」
くるりと回って自分の格好を確認するが、普段の格好に深緑のエプロンを着けただけなのだが、と首をかしげる。
「あ、せっかくだから写真撮ろうよ!」
「え?みんなが来てから撮るんじゃ……?」
「それはそれ!これはこれー!レイジングハートお願い。」
『All right.』
フィンを展開して浮かび上がるレイジングハート。なのははユーノに駆け寄り、彼の腕を両手で抱きしめるように掴む。
「ほらユーノ君。ピースピース!」
可愛らしい無邪気な笑顔で言うが、抱きしめられる側のユーノはそれどころではない。
「ちょ、ちょっとなのはくっつきすぎだって!それになんでレイジングハート?」
「えー、二人で撮るんだからこれぐらいくっつかないと綺麗に撮れないよー。レイジングハートにはこの間マリーさんにカメラ機能付けてもらったんだよ。」
あまりに率直な意見と、どんどん多機能化していくデバイスに一瞬言葉を失い、その隙になのははより強く腕を掴む。
「ほらほらユーノ君!レイジングハートの方向いて!ぴーすぴーす!」
『撮りますよ、お二人共。』
「え、えぇ?ぴ、ピース。」
カシャリと―――どこで鳴っているのかは分からないが―――音がして写真が表示される。顔がひきつりぎこちない笑顔のユーノと、さすがは女の子ということか元々の素材の良さか、なのはは可愛らしく写っていた。
「あはは、僕変な顔してる。」
「ホントだ。……でもこうして二人で写真撮るのって初めてだね。」
「あれ?そうだっけ?」
「うん。」
写真が表示されたウィンドウをそこにあるかのように撫でるなのは。
「だから、これはユーノ君との最初の記念の宝物なの。」
「え?」
「ううん、なんでもなーい!さっ早く次の料理運ぼう。」
「う、うん。あ、待ってよなのは!」
【ハラオウン家】
「リンディ母さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
「はい、よろしくお願いしますフェイトさん。」
リビングで丁寧な挨拶が交わされる。夕方からの宴会に合わせて、夜勤からいま帰宅したリンディにフェイトが恭しく頭を下げる。
「フェイトちゃんはそういうとこ丁寧だねぇ。」
「家族なんだからもーちょっと力抜いていいと思うんだけどねー。」
キッチンの方からエイミィとアルフの声が届く。
「二人共そっちの準備の方はどう?」
「もーちょっとで全部できますよー。」
「二人はリビングでゆっくりしててー。」
「え、私も手伝うよ?」
「いいからー。フェイトもお正月ぐらいゆっくりするのー。」
「う、うん。」
「うふふ、お言葉に甘えて時間までゆっくりしましょうか。」
作業する二人をチラチラと気にしながら、フェイトとリンディはリビングへ移動する。と、そこで頭を抱えて何かを考え込む先客が一人。
「クロノどうしたの?」
机を見れば、何かしらの数字が走り書きされたメモが広げられている。
「なに?経費系の書類でも残してたの?」
「いえ、そういうわけじゃないんだけど……。」
「え、じゃあこれは?」
問われて、ついつい溜息をつきながらクロノは答える。
「エリオたちのな、お年玉をどうつつもうかと悩んでて……。」
「え?」
「君が保護者として引き取った子達なんだから、僕にとっては甥っ子だし、彼らにとっては僕はちゃんとした収入のある伯父だ。」
「う、うん。」
真剣に言うクロノの表情に気圧され思わず頷くフェイト。
「多分、貰えないからと不満を言う子じゃないが、しかし全く期待してないこともないはずだ。僕も普段使うこともないんだし、プレゼントを選ぶセンスもないから、彼らが何を買うか自分で楽しんでくれるなら一石二鳥だ。」
これは彼はなにか言い訳しているのだろうか?とフェイトはいぶかしがるが構わずクロノは続ける。
「だから、お年玉をあげようと思ったんだが、金額がどれぐらいが良いのか良く分からないんだ。」
「クロノ前置きが長いよ。」
「うぐっ……。」
「ホントに正月からこの子は……。」
つまり迷いに迷って迷いすぎて答えが出ない悪循環に陥ってしまったらしい。本当に経理関係の書類ならばさくさく整理していくであろうに、個人的な事となるとホントに疎くてダメな男である。
「うーん、適当にキリがいい数字でいいんじゃないかな?5千円ぐらい?」
「それぐらいで良いのか?」
「だと思うよ?……え、クロノいくら位つつもうとしてたの?」
聞かれて、クロノは気まずそうに視線を外しながら。
「30万円ぐらいが相場かと……。」
「それはお年玉じゃなくて冬のボーナスだよ!っていうかボーナスでもそんなにもらえないよ!」
「そ、そうか?」
「そうなの!」
「むぅ……。」
「大体、いくら伯父さんだからってそんなホイホイと小遣い渡しちゃだめだよ!」
「いや、そんなホイホイだなんて……。」
「だったら、ちゃんと相場とか調べてからあげて!」
「むむむぅ…………。」
いつもと違い完全に言い負かされるクロノ。
「はぁ……。」
ダメな父親とそれを怒る母親のようなやり取りをする息子と娘を眺め、リンディは秘かに懐に準備していたぽち袋をどう渡したものかとため息をつくのであった。
【紫天一家】
「王様―!ほら見て見て、着物きたよ!」
「馬鹿者、それはまだ襦袢だレヴィ!見ててこっちが寒々しいわ!」
「ほら済ませますよ。」
「えー、これでいいよー寒いならシュテるんを抱きしめればいいんだよ!」
「それで良いなら、私は構いませんが?」
「良くない!いちいちそんな事出来るか!いいから早く用意していたのを着てこい。」
「はーい。」
言われてしぶしぶと――――しかしやかましく――――レヴィがシュテルと隣の部屋へ戻っていく。それを確認してディアーチェは再び作業へと戻る。
「ちょっと締めるぞユーリ。」
「はい、どうぞ!」
「いや、そこまで構えなくてもいいんだが、なっ!と。」
ユーリの細い胴を帯が締め付ける。と言っても苦しくないようディアーチェが絶妙な力加減をしているので実際にユーリには何の支障も無い。
そうしている間に彼女はてきぱきとお太鼓を作り仕上げていく。
「よし、完成だ。」
「わぁ!えへへ凄いです、時代劇の人と一緒ですね!」
「いやまぁ、そうなんだがその感想はどうなんだ……?」
クルクル回りながらはしゃぐユーリ。着物の柄のせいかそれこそ時代劇の御茶屋に出てくる娘に見える。
「王様ぁー!今度こそ出来たー!」
「――――とすればこやつは暴れん坊姫と言ったところか。」
「ん?なになに、何の話?」
「気にするな。…………うむ、今度はちゃんと出来てるな。」
レヴィの着姿を確認しながら頷く。動作が一々大きいので所々既に崩れてきているような気もするが、彼女の場合許容範囲だ。
「どうどう?僕カッコイイ?ごくつまみたい?」
「後身長と年季が30は足りんわ。まぁ、似合ってはいるぞ。」
「やったー!」
「やれやれ。せっかく着付けたのですからたまには落ち着いて欲しいものです。」
「おぉ、ご苦労シュテル。」
「王も、お疲れ様です。」
隣の部屋からシュテルがため息をつきながらも何時もどおりの表情で出てくる。当然のことではあるがユーリとレヴィが着物の着付けなど出来るわけも無く。必然シュテルとディアーチェがそれぞれ着せたのだが、とにかくレヴィがジッとしないのだ。最初などはかけてあった着物をジャンバーのように羽織って腰紐で結び、ポーズをとって。
「これでおっけぃ!ロックだぜ!」
即座にディアーチェの拳骨が下り、しばらくは大人しく着せられていたのだが、ちょくちょく先ほどのように暴れだしていたので、シュテルの要した労力はディアーチェの比ではなかった。
「貴様も良く似合っておるぞ。」
「恐縮です。リンディ提督には後ほど改めてお礼を言わねばなりませんね。」
「まぁ、奴らが勝手に貢いできたんだがな。褒めてやるついでに礼を言ってやるのも良いであろう。」
それはつい先日、総出で家の大掃除をしていた年末に、荷物を抱えたリンディが突如現れ。
「新年の宴会には皆これを着て来てね。」
と、持って来たのだ。レヴィとユーリは珍しい物にはしゃいだが、着物の相場を知っていたシュテルは流石にもらえないと断ったのだが。
「良いのよ。皆が着てるのを見たい私の趣味なんだから。」
と謙遜でも本音でも余計に受け取りづらい返事で全員分を置いていったのだ。
「そうです、そういえば王はまだ着られないのですか?」
そこでディアーチェがまだいつもの服装である事に気付く。時間を考えればもう着替えなければならないのだが。
「あぁ、我は良いのだ。どうせレヴィめが道中で着崩して向うで直す事になろうからな。我はいつもの動きやすい格好でいるのだ。フフン、我ながら見事な先見の明よ。」
誇らしげにほくそ笑むディアーチェ。いつもならばシュテルも同意して素直に褒めるところなのだが、残念だが今日は王のその思惑通りにはならない。
「ユーリ。」
「はい?」
「王にも着物を着てもらうのでとりあえず取り押さえてもらえますか?」
「な、なんだとっ!?」
「はーい!」
「オイ、わ、コラァ!」
可愛らしい返事と共に展開される、鬼の如き魔手に掴まれ移動させられるディアーチェ。見た目はゲームセンターにあるUFOキャッチャーそのものである。違うのはぬいぐるみ側に逃げ道が無いところぐらいだ。
「我はこの格好で良いというておろうが!」
「そうはいきません。せっかくリンディ提督に頂いたのですから、着ないのは不義理です。高町家の方なら着物も直してもらえますでしょうし。」
「えぇい!その無駄な合理性を押し付けるな!ユーリもはーなーせー!」
「ダメですよー。シュテルの言うとおりです。」
「そうだぞー王様。王様も着物着てよいではないかやろーよー!」
「うるさいわ貴様!」
「ほら、王。一度決めた事を覆されるのが面白くないのは分かりましたから、大人しくしてください。」
「やっぱり貴様我の事尊敬しておらぬなぁー!?」
そうして。
結局ディアーチェが着終わるまでにレヴィよりも時間がかかってしまうのであった。
気が向けば宴会編も書くかも
高町家、ハラオウン家、紫天一家それぞれほんとにちょっとした小話。
といっても、家族全部出てくるわけじゃないんですけどね。
八神家は大晦日ネタやったので今日はお休みー
なに気にこのサイトに初登場ばっかりなキャラばっかり。そして紫天一家でこーどなすてまなのです(ウケケ
では、お暇な方は続きからどうぞー
【高町家】
普段は緊張感のある静けさの道場に、並ぶ色とりどりのおせち。その光景にユーノは素直に感嘆の吐息も漏らした。
「凄いね。」
「うん、今年はみんなが集まるから、お母さんもお姉ちゃんも凄く張り切ってたから。」
答えたのは、一緒に料理を並べていたなのは。こうして二人で大分並べたが、台所ではまだまだ料理が出来てきているはずである。今日は夕方からハラオウン家、八神家は勿論アリサやすずか、紫天一家にアースラスタッフもやってきての大宴会が行われるのだ。アルフやヴィータの普段の食べっぷりを考えればこの道場に今ずらりと並べられた量でも足りるかどうか不安である。
「ごめんねユーノ君。お客さんなのに手伝わせちゃって。」
「あぁ、気にしないで。元々そのつもりで時間よりも早く来たんだし。」
その人数を聞いて、手伝いが要るだろうと思ったのは本当だった。
「でもお母さん……。」
「あはは、ほんとに気にしないでよなのは。」
本当だったのだが、まさか到着するなり、ユーノが来るのがわかっていたかのようにジャストサイズのエプロンを渡されるとは思っていなかった。
桃子にしてみればなのはと二人にしてあげようという小粋な計らいなのだが――――しかし、エプロンの準備をしていた理由の説明にはならない――――残念ながら当人達はそんな気遣いに気付く事も無く、ただただ二人で協力して作業をしているのだった。
「んー……。」
「って、どうしたのなのは?なにか付いてる?」
「んーん。ユーノ君エプロンに合うなーって。」
「えぇ!?そ、そうかな?」
「うん。似合ってる似合ってる!」
くるりと回って自分の格好を確認するが、普段の格好に深緑のエプロンを着けただけなのだが、と首をかしげる。
「あ、せっかくだから写真撮ろうよ!」
「え?みんなが来てから撮るんじゃ……?」
「それはそれ!これはこれー!レイジングハートお願い。」
『All right.』
フィンを展開して浮かび上がるレイジングハート。なのははユーノに駆け寄り、彼の腕を両手で抱きしめるように掴む。
「ほらユーノ君。ピースピース!」
可愛らしい無邪気な笑顔で言うが、抱きしめられる側のユーノはそれどころではない。
「ちょ、ちょっとなのはくっつきすぎだって!それになんでレイジングハート?」
「えー、二人で撮るんだからこれぐらいくっつかないと綺麗に撮れないよー。レイジングハートにはこの間マリーさんにカメラ機能付けてもらったんだよ。」
あまりに率直な意見と、どんどん多機能化していくデバイスに一瞬言葉を失い、その隙になのははより強く腕を掴む。
「ほらほらユーノ君!レイジングハートの方向いて!ぴーすぴーす!」
『撮りますよ、お二人共。』
「え、えぇ?ぴ、ピース。」
カシャリと―――どこで鳴っているのかは分からないが―――音がして写真が表示される。顔がひきつりぎこちない笑顔のユーノと、さすがは女の子ということか元々の素材の良さか、なのはは可愛らしく写っていた。
「あはは、僕変な顔してる。」
「ホントだ。……でもこうして二人で写真撮るのって初めてだね。」
「あれ?そうだっけ?」
「うん。」
写真が表示されたウィンドウをそこにあるかのように撫でるなのは。
「だから、これはユーノ君との最初の記念の宝物なの。」
「え?」
「ううん、なんでもなーい!さっ早く次の料理運ぼう。」
「う、うん。あ、待ってよなのは!」
【ハラオウン家】
「リンディ母さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
「はい、よろしくお願いしますフェイトさん。」
リビングで丁寧な挨拶が交わされる。夕方からの宴会に合わせて、夜勤からいま帰宅したリンディにフェイトが恭しく頭を下げる。
「フェイトちゃんはそういうとこ丁寧だねぇ。」
「家族なんだからもーちょっと力抜いていいと思うんだけどねー。」
キッチンの方からエイミィとアルフの声が届く。
「二人共そっちの準備の方はどう?」
「もーちょっとで全部できますよー。」
「二人はリビングでゆっくりしててー。」
「え、私も手伝うよ?」
「いいからー。フェイトもお正月ぐらいゆっくりするのー。」
「う、うん。」
「うふふ、お言葉に甘えて時間までゆっくりしましょうか。」
作業する二人をチラチラと気にしながら、フェイトとリンディはリビングへ移動する。と、そこで頭を抱えて何かを考え込む先客が一人。
「クロノどうしたの?」
机を見れば、何かしらの数字が走り書きされたメモが広げられている。
「なに?経費系の書類でも残してたの?」
「いえ、そういうわけじゃないんだけど……。」
「え、じゃあこれは?」
問われて、ついつい溜息をつきながらクロノは答える。
「エリオたちのな、お年玉をどうつつもうかと悩んでて……。」
「え?」
「君が保護者として引き取った子達なんだから、僕にとっては甥っ子だし、彼らにとっては僕はちゃんとした収入のある伯父だ。」
「う、うん。」
真剣に言うクロノの表情に気圧され思わず頷くフェイト。
「多分、貰えないからと不満を言う子じゃないが、しかし全く期待してないこともないはずだ。僕も普段使うこともないんだし、プレゼントを選ぶセンスもないから、彼らが何を買うか自分で楽しんでくれるなら一石二鳥だ。」
これは彼はなにか言い訳しているのだろうか?とフェイトはいぶかしがるが構わずクロノは続ける。
「だから、お年玉をあげようと思ったんだが、金額がどれぐらいが良いのか良く分からないんだ。」
「クロノ前置きが長いよ。」
「うぐっ……。」
「ホントに正月からこの子は……。」
つまり迷いに迷って迷いすぎて答えが出ない悪循環に陥ってしまったらしい。本当に経理関係の書類ならばさくさく整理していくであろうに、個人的な事となるとホントに疎くてダメな男である。
「うーん、適当にキリがいい数字でいいんじゃないかな?5千円ぐらい?」
「それぐらいで良いのか?」
「だと思うよ?……え、クロノいくら位つつもうとしてたの?」
聞かれて、クロノは気まずそうに視線を外しながら。
「30万円ぐらいが相場かと……。」
「それはお年玉じゃなくて冬のボーナスだよ!っていうかボーナスでもそんなにもらえないよ!」
「そ、そうか?」
「そうなの!」
「むぅ……。」
「大体、いくら伯父さんだからってそんなホイホイと小遣い渡しちゃだめだよ!」
「いや、そんなホイホイだなんて……。」
「だったら、ちゃんと相場とか調べてからあげて!」
「むむむぅ…………。」
いつもと違い完全に言い負かされるクロノ。
「はぁ……。」
ダメな父親とそれを怒る母親のようなやり取りをする息子と娘を眺め、リンディは秘かに懐に準備していたぽち袋をどう渡したものかとため息をつくのであった。
【紫天一家】
「王様―!ほら見て見て、着物きたよ!」
「馬鹿者、それはまだ襦袢だレヴィ!見ててこっちが寒々しいわ!」
「ほら済ませますよ。」
「えー、これでいいよー寒いならシュテるんを抱きしめればいいんだよ!」
「それで良いなら、私は構いませんが?」
「良くない!いちいちそんな事出来るか!いいから早く用意していたのを着てこい。」
「はーい。」
言われてしぶしぶと――――しかしやかましく――――レヴィがシュテルと隣の部屋へ戻っていく。それを確認してディアーチェは再び作業へと戻る。
「ちょっと締めるぞユーリ。」
「はい、どうぞ!」
「いや、そこまで構えなくてもいいんだが、なっ!と。」
ユーリの細い胴を帯が締め付ける。と言っても苦しくないようディアーチェが絶妙な力加減をしているので実際にユーリには何の支障も無い。
そうしている間に彼女はてきぱきとお太鼓を作り仕上げていく。
「よし、完成だ。」
「わぁ!えへへ凄いです、時代劇の人と一緒ですね!」
「いやまぁ、そうなんだがその感想はどうなんだ……?」
クルクル回りながらはしゃぐユーリ。着物の柄のせいかそれこそ時代劇の御茶屋に出てくる娘に見える。
「王様ぁー!今度こそ出来たー!」
「――――とすればこやつは暴れん坊姫と言ったところか。」
「ん?なになに、何の話?」
「気にするな。…………うむ、今度はちゃんと出来てるな。」
レヴィの着姿を確認しながら頷く。動作が一々大きいので所々既に崩れてきているような気もするが、彼女の場合許容範囲だ。
「どうどう?僕カッコイイ?ごくつまみたい?」
「後身長と年季が30は足りんわ。まぁ、似合ってはいるぞ。」
「やったー!」
「やれやれ。せっかく着付けたのですからたまには落ち着いて欲しいものです。」
「おぉ、ご苦労シュテル。」
「王も、お疲れ様です。」
隣の部屋からシュテルがため息をつきながらも何時もどおりの表情で出てくる。当然のことではあるがユーリとレヴィが着物の着付けなど出来るわけも無く。必然シュテルとディアーチェがそれぞれ着せたのだが、とにかくレヴィがジッとしないのだ。最初などはかけてあった着物をジャンバーのように羽織って腰紐で結び、ポーズをとって。
「これでおっけぃ!ロックだぜ!」
即座にディアーチェの拳骨が下り、しばらくは大人しく着せられていたのだが、ちょくちょく先ほどのように暴れだしていたので、シュテルの要した労力はディアーチェの比ではなかった。
「貴様も良く似合っておるぞ。」
「恐縮です。リンディ提督には後ほど改めてお礼を言わねばなりませんね。」
「まぁ、奴らが勝手に貢いできたんだがな。褒めてやるついでに礼を言ってやるのも良いであろう。」
それはつい先日、総出で家の大掃除をしていた年末に、荷物を抱えたリンディが突如現れ。
「新年の宴会には皆これを着て来てね。」
と、持って来たのだ。レヴィとユーリは珍しい物にはしゃいだが、着物の相場を知っていたシュテルは流石にもらえないと断ったのだが。
「良いのよ。皆が着てるのを見たい私の趣味なんだから。」
と謙遜でも本音でも余計に受け取りづらい返事で全員分を置いていったのだ。
「そうです、そういえば王はまだ着られないのですか?」
そこでディアーチェがまだいつもの服装である事に気付く。時間を考えればもう着替えなければならないのだが。
「あぁ、我は良いのだ。どうせレヴィめが道中で着崩して向うで直す事になろうからな。我はいつもの動きやすい格好でいるのだ。フフン、我ながら見事な先見の明よ。」
誇らしげにほくそ笑むディアーチェ。いつもならばシュテルも同意して素直に褒めるところなのだが、残念だが今日は王のその思惑通りにはならない。
「ユーリ。」
「はい?」
「王にも着物を着てもらうのでとりあえず取り押さえてもらえますか?」
「な、なんだとっ!?」
「はーい!」
「オイ、わ、コラァ!」
可愛らしい返事と共に展開される、鬼の如き魔手に掴まれ移動させられるディアーチェ。見た目はゲームセンターにあるUFOキャッチャーそのものである。違うのはぬいぐるみ側に逃げ道が無いところぐらいだ。
「我はこの格好で良いというておろうが!」
「そうはいきません。せっかくリンディ提督に頂いたのですから、着ないのは不義理です。高町家の方なら着物も直してもらえますでしょうし。」
「えぇい!その無駄な合理性を押し付けるな!ユーリもはーなーせー!」
「ダメですよー。シュテルの言うとおりです。」
「そうだぞー王様。王様も着物着てよいではないかやろーよー!」
「うるさいわ貴様!」
「ほら、王。一度決めた事を覆されるのが面白くないのは分かりましたから、大人しくしてください。」
「やっぱり貴様我の事尊敬しておらぬなぁー!?」
そうして。
結局ディアーチェが着終わるまでにレヴィよりも時間がかかってしまうのであった。
気が向けば宴会編も書くかも
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テーマ : 魔法少女リリカルなのは
ジャンル : アニメ・コミック